介護の現場におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは?【介護DX】

経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」で『2025年の崖』という言葉が初めて使われてから、各業界・各企業においてDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉があちこちで使われるようになりました。

『2025年の崖』とは、古いITシステムが企業のDX推進を妨げるレガシーシステムの老朽化、特にCOBOLなどの古いプログラミング言語に精通したエンジニアが不足することによるIT人材の不足、DXの重要性を理解していない経営層が多いことによる経営層の理解不足などが原因で、日本企業がDXを推進しなければ、2025年以降に年間で最大12兆円の経済損失が発生する可能性があると警告したものです。

都道府県や市区町村などの自治体もIT人材不足が深刻となることが予想されており、DXを推進しないと行政サービスにも支障をきたすと言われています。国はこれらの問題に対応するため、現在、基幹業務システムの標準化を目指して、ガバメントクラウド、デジタル政府化を急速に進めています。
介護保険においても、介護情報基盤の整備を進めています。介護情報基盤とは、利用者本、市町村、介護事業所、医療機関が、利用者の介護情報を電子的に閲覧や共有できる仕組みのことで、2026年4月から施行される予定になっています。介護現場に大きな変革がもたらされることになります。

DXを成功させるためには、単にデジタル機器を導入するだけではなく、組織全体のマインドセットの変革が必要になると言われています。これが『DXマインド』と呼ばれているものです。DXマインドは、従業員がデジタル技術を活用して業務を改善し、効率化し、最終的には働く人や利用者の満足度と質の高いサービスの提供を進めるための意識や姿勢を指します。具体的には、以下のようなマインドセットが求められます:

  • 変化への適応:最新の技術や情報を積極的に取り入れ、変化に柔軟に対応する姿勢。介護の現場は、制度改正や取り巻く環境が日々激しく変化しています。これらの変化への柔軟な適応が求められます。
  • コラボレーション:事業所内、関係者間での協力を重視し、情報共有や共同作業を推進する。国においても介護業界の効率化・生産性向上のために「大規模化・協働化」を進める施策を打ち出しています。
  • 顧客・ユーザーへの共感:利用者やケアプランの目標などの真のニーズを理解し、それに応じたサービスを提供する。DXはあくまでも利用者や働く人にとって真に貢献するものである必要があるでしょう。手段のみに終始しないようにする必要があります。
  • 常識にとらわれない発想:従来のやり方に固執せず、新しいアイデアや方法を模索する。今までこのようにやっていた、などに終始するのではなく、介護の現場においても常に新しいものを取り入れ自らを進化させてゆく必要があります。介護技術の技法や必要となる知識も、変化し続けています。
  • 反復的なアプローチ:試行錯誤を繰り返しながら、改善を続ける姿勢。新しい試みをしたら検証し、それを繰り返すことによってさらに質の高いサービスや働く人の満足度を高めることが可能になるでしょう。
  • 柔軟な意思決定:状況に応じて迅速かつ柔軟に意思決定を行う。介護の現場において、DXの中核となるのが経営者や現場のリーダー格の人になります。組織も新しい時代に対応してゆけるような柔軟な意思決定ができる体制が求められるでしょう。
  • 事実に基づく判断:データや事実に基づいて判断を行う。偏見や思い込み、主観的な経験則だけに基づく判断は命取りにもなります。しっかりと事実に基づいた判断が求められます。

介護においても、これらのマインドセットを持ち、事業所職員一人ひとりがDXを自分事として捉え、積極的に自らの仕事と現場の変革に取り組むことが必要になるでしょう。
DXによる働きやすい職場は、利用者の満足度を高めることにもつながり、重度化予防にもつながる可能性があります。また、給与アップにも寄与します。深刻な人材不足に苦しむ介護業界だからこそ、働きやすく給与水準も高い事業所に人が集まります。
業界再編が急速に進むであろうと言われている介護業界において、DXは、待ったなしの取り組みです。

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