
介護事業所におけるデジタル化の背景
令和6年度の法改正で訪問介護の報酬が引き下げられたことが、昨今の訪問介護事業所の閉鎖の爆増に関係しているということが指摘されています。厚生労働省の方でも、併設型の訪問介護事業所と単独型の訪問介護事業所を分けて利益等の把握を務めることとしているようです。
これらを受け、いわゆる「常勤1人あたり5.4万円規模」の補助金や、訪問介護事業所に特化した補助金など、さまざまな施策を打ち出しています。
しかしながら、日本の急激な人口減少や深刻な人手不足、他産業における大幅な賃上げなど、介護職員・ヘルパー不足に歯止めがかかる気配はありません。国の補助金も、生産性向上の取り組みとセットであることも多く、私たち介護業界で働く人も、他産業と同程度のデジタル化への取り組みが必須になると思います。
とりわけ、訪問介護事業所において、未だにアナログで作業をしているところも少なくなく、これではますます『人から選ばれない業界』になってしまいます。ケアプランデータ連携システムの無料キャンペーンもはじまりますので、積極的にデジタル化に取り組む必要があります。
訪問介護事業所におけるアナログからデジタルへの変換
デジタル化は、何もお金をかけて機器を導入することばかりではありません。訪問介護事業所、特にサービス提供責任者の仕事の半分は事務作業です。事務作業はデジタル化により大幅に時間短縮が可能です。
以前は紙の訪問記録に書いていた日々のサービス毎の介護記録も、介護ソフトを導入しスマホからの入力に切り替えている事業所も多いかと思います。介護ソフトには、利用者情報や職員の情報、サービスの記録、請求情報など、業務に必要な情報の多くが保存されています。これらの情報を最大限に活用することが、業務効率化や生産性向上の第一歩なのです。
デジタル化の要は、デジタルデータを使い回しすることです。紙に印刷してそこに書き込み、それをまた入力するなどは『愚の骨頂』です。デジタル→アナログ→デジタルなのではなく、デジタル→デジタル→デジタルが基本中の基本です。一番最後に印刷してファイルしておくのは良いと思います。もちろん、印刷しないでPDFにしてデータとして保存しておけば事業所内もスッキリしますし、オンラインストレージに保存しておけば災害対策にもなります。
デジタル化 ~ 具体例
さて、ここからは具体例な例についてみてゆきましょう。介護ソフトから各種の情報をエクセルに移して利用する方法について解説します。
例えば、登録ヘルパーの給与計算や各種の重度者要件や介護福祉士の配置要件などの毎月のチェック、BCPの災害時個別支援計画のヘッダー作成など、毎月・毎年ごとに決まってやらなければならない作業は積極的に自動化したいものです。
特に事業所ごとに複雑な体系となっている訪問介護事業所の登録ヘルパーの給与計算は、介護ソフトのデフォルト機能では対応できない場合も多々あります。しかしながら、介護ソフトにおいてヘルパーの稼働実績は出力できます。介護ソフトごとに出力できるデータや形式は異なりますが、csvやpdfで出力できる場合が多いと思います。本当は、必要なデータをクライアントが自由に選択できれば良いのですが、ベンダーの事情なのか、カスタマイズは別途ベンダーに依頼しないといけない場合も多いみたいです。このあたりは、福祉機器展などに出向いて、直接ベンダーに確認するのが手っ取り早いかと思います。また、本音を言えば、事業所の独自システムと連携できるAPIが利用できたら更に良いのですが、ベンダーも民間企業なので、そこまで求めるのは酷かもしれないのですが、本音はAPI連携できるのがベストです。
不満を言っていても仕方ないので、介護ソフトから出力できるcsvやpdfファイルをエクセルに取り込んで、データが座標化できれば、データテーブルとして、関数処理しても良いし、RPAで自動化しても良いし、VBAやPythonで自動化しても良いかと思います。API連携ができなくても、ほぼ連携自体は可能です。
エクセルのパワークエリ
これを可能にするのが、エクセルの『パワークエリ』なのですが、一度システムをくんでしまえば、数時間、十数時間かかっていた作業も僅か、数秒〜数分で出来るようになります。この、圧倒的早さと正確さを体験してしまったら、元のアナログ的なやり方には戻れなくなります。目の前にあるパソコンの標準機能をフルに使えば、大幅な業務効率化ができるようになります。
何故そうしないのか、何故それをしないのか。そうだとしたら、それが介護の仕事を他の産業より見劣りさせている原因なのかもしれません。少なくとも、介護事業所自体を自らビジネス標準にアップデートしてゆくことは必須であると思うのです。
パワークエリの使い方は、超簡単です。様々な形式のデータをエクセルに取り込むことができます。

例えば、以下のようなpdfがあるとします。

これをパワークエリでエクセルに取り込むことができます。例では簡単なファイルですが、登録ヘルパーの給与計算など、数百ぺに及ぶデータも取り込むことが可能です。

エクセルに取り込んだデータは、そのままコピペしても良いのですが、コピペ作業も処理も、人間がやると間違えたり、作業に時間がかかってしまうので、プログラミングで自動化しましょう。数時間から十数時間かかっていた作業が、数秒から数分で完了します。
利用者様と向き合う時間を増やし、ひいては売上のアップや職員の給与爆増にも繋がるデジタル化による業務効率化を目指しましょう! デジタル化に興味がない、無関心、デジタルリテラシーのある人間がアクセスしてこない、そんな現状があるとはしたら、それがこの業界の一番の問題点なのかもしれません。少なくとも、厚生労働省が提示している施策はできて当たり前、その上で法人ごとの独自の取り組みができる…、これが必須なのだと個人的には思っています。
エクセル自動化のプログラミング ~ VBAにチャレンジ
エクセルには標準でプログラミングのエディターが搭載されていますが、初期設定では非表示になっています。

オプションで『開発タブ』を表示させましょう。

『開発』タブが表示されました。エディターを開いてVBAのソースコードを書いて、秒速で仕事をしましょう❗️

VBAのエディターはこんな感じです。以前は求める処理を可能にするコードをネットで調べて理解した上でコーディングする必要がありましたが、ChatGPT3.5の登場依頼、ソースコードはAIが教えてくれるようになりました。『理解してから使う』から『使えるからとりあえず作って後から理解する』に激変しました。難しく考えないで、とりあえずやってみましょう。一度やってしまえば、その後は発展のみです。この、今の時代の変化を体現できるのも、介護ヘルパー兼自称エンジニアの特権だと思います。今的には必須の『Canva』も積極的に活用しましょう❗️

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