
令和7年度も、折り返し地点が見えはじめてきました。処遇改善加算や特定事業所加算を取得している事業所は、年度途中で管理者や業務管理体制における法令順守責任者は、計画通りに研修が実施されているか、記録は必要なものが揃っているのか、問題や課題はないのか等を徹底して確認しないといけません。
訪問介護事業所において、職員研修はサービスの質を確保し、事業所の運営基準を満たす上で非常に重要です。特に「法定研修」 「特定事業所加算の個別研修」 「処遇改善加算におけるキャリアパス要件Ⅱの研修」の3つは、それぞれ異なる目的と要件を持っており、適切な実施と記録が求められます。
以下に、それぞれの研修の目的、内容、そして保存すべき記録について詳しく解説します。
1. 法定研修
これは、介護保険法や関連法令に基づき、すべての介護事業所に実施が義務付けられている研修です。事業所の運営基準を満たす上で不可欠であり、未実施の場合は運営指導で指導対象となります。
訪問介護事業所に求められる主な内容
法定研修は、以下の項目について全ての従業者に実施し、記録を保存することが求められます。
- 利用者のプライバシーの保護の取組に関する研修
- 従業者を対象とした、倫理及び法令遵守に関する研修
- 訪問介護員の接遇に関する研修
- 身体的拘束等の排除のための取組に関する研修(従事者だけでなく、管理者も受講)
- 高齢者虐待防止に関する研修(従事者だけでなく、管理者も受講)
- 事故の発生予防又はその再発の防止に関する研修
- 事故の発生等緊急時の対応に関する研修
- 感染症及び食中毒の発生の予防及びまん延の防止に関する研修
- 従業者に対する認知症及び認知症ケアに関する研修
- 業務継続計画(BCP)自然災害編/感染症編に関する研修
- 業務継続計画(BCP)自然災害編/感染症編に基づく訓練
- ハラスメント防止に関する研修
保存すべき記録(書類)
- 年間研修計画書: 実施する研修の年間スケジュール、目的、内容を定めたもの。
- 研修開催記録: 個々の研修ごとに、開催日時、場所、研修内容、講師、参加者名を記載したもの。
- 参加者名簿: 研修に参加した職員全員がわかるもの。
- 研修資料: 研修で使用した資料や配布物。
- 研修実施記録: 研修内容の理解度を確認するためのテストやレポートなど。
2. 特定事業所加算の個別研修
特定事業所加算は、質の高いサービス提供体制を整えている事業所を評価するための加算です。この加算の要件となる個別研修は、法定研修のような基本的な内容ではなく、個々の職員の能力や課題に応じて、専門性を高めることを目的としています。
研修の目的と内容
- 目的: 事業所全体としてのサービス提供の質をさらに向上させるため、個々の職員の専門性を高めること。特に、重度者ケアや看取り、喀痰吸引など、より専門的で難易度の高いサービスに対応できる人材の育成が中心です。
- 内容: 個々の職員のスキルや経験、課題に応じて内容を設定します。例えば、看取り期にある利用者への関わり方、喀痰吸引の手技、医療機器を使用している利用者への対応などが挙げられます。法定研修とは異なり、一人ひとりに合わせた目標設定が特徴です。
保存すべき記録(書類)
- 個別研修計画書: 職員一人ひとりについて、研修の個別具体的な研修の目標、内容、期間、実施方法、達成度の評価方法を具体的に明記したもの。
- 研修実施記録: 個別計画に基づいた研修の実施日時、内容、達成度評価を詳細に記録したもの。
- 達成度評価: 計画書に定めた評価方法に基づき、研修後の職員の知識・技術がどの程度向上したか、その達成度を記録したもの。
3. 処遇改善加算におけるキャリアパス要件Ⅱの研修
処遇改善加算は、介護職員の賃金改善を図るための加算です。この加算におけるキャリアパス要件Ⅱの研修は、職員のキャリアアップとそれに伴う賃金改善を促進し、人材の確保と定着を図ることを目的としています。
研修の目的と内容
- 目的: 職員の職務内容や職責に応じた能力を習得させることで、キャリアアップとそれに伴う賃金改善を促進すること。
- 内容: 事業所が定めたキャリアパス(例:ヘルパー→サービス提供責任者→管理者、もしくは、初級ヘルパー→中級ヘルパー→上級ヘルパーなど)に合わせて、各段階で求められる知識や技術を習得するための研修です。外部研修の受講支援、資格取得のための費用援助や勤務シフトの調整なども含まれます。
保存すべき記録(書類)
- キャリアパスの策定: 職位や職責、必要な要件を明確にしたキャリアパスの図や文書(根拠となる書類は、就業規則など明確なものである必要がある)。
- 研修体系の策定: キャリアパスの各段階に対応した研修内容を定めた研修計画書。
- 研修実施記録: 研修の実施日時、内容、参加者、講師、評価結果などを記録したもの。
- 能力評価の実施記録: 職員の能力を客観的に評価する仕組み(評価項目、評価方法など)を定めた上で、定期的に実施した能力評価の記録。評価結果は、処遇改善加算の賃金改善に反映されることが重要です。
3つの研修の違いの比較
項目 | 法定研修 | 特定事業所加算の個別研修 | 処遇改善加算 キャリアパス要件Ⅱの研修 |
目的 | 介護事業所の運営基準遵守 | 専門性の高いサービスの提供体制強化 | 介護職員のキャリアアップと処遇改善 |
対象者 | 介護業務に携わる全職員 | 個別の課題や専門性向上を目指す職員 | キャリアパスに沿って成長を目指す全職員 |
内容 | 基本的な法令や知識の習得 | 個人の課題や専門分野に特化した内容 | 職務内容・職責に応じた能力習得 |
保存書類 | 計画書、参加者名簿、実施記録、研修資料、研修実施記録 | 個別計画書、実施記録、研修資料、研修達成度評価票 | キャリアパス研修計画書、実施記録、研修資料、能力評価票 |
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