訪問介護事業所におけるバックオフィス問題〜協働化は必須か?

訪問介護事業所は、いくつかの大手を除いて、小規模の事業所がそのほとんどを占めている業界になっています。深刻な人材不足を背景に国も、小規模事業所の大規模化や協働化を推進しています。社会福祉連携推進法人の制度化も、それらを背景にしていて、各種加算の算定要件にも組み込まれています。

大規模に事業運営している大手企業も、1法人1事業所を運営している小規模事業所も、バックオフィスの仕事は変わりがありません。そこで、小規模事業所が連携してバックオフィス機能を協働化することに、処遇改善加算等を通じてインセンティブを与えています。

訪問介護事業所を大規模に運営しようとすると、事業所毎のサービスや提供体制にバラツキがでないよう画一化していく傾向がありますが、小規模事業所は比較的、現状に合わせて柔軟に対応できるといった『強み』もあるため、一概に大規模化がベストとは言い難いのも事実です。

訪問介護事業所のバックオフィスという話をしましたが、当たり前なのですが、バックオフィス業務といっても様々なものがあります。シフト作成から請求事務、研修計画の策定から実施、実績報告の取りまとめ、運営基準で定められた各種会議や委員会の開催と取りまとめ、職員への周知、さらには各種加算で求められる様々な取り組みや記録など、多岐にわたります。

厚生労働省の肩を持つわけではないのですが、複数事業所に登録しているヘルパーさんもいる現状の中、これらの業務を事業所ごとにバラバラにおこなっているのはムダではないかと、個人的には感じています。それぞれの法人や事業所の個性や強みを維持しながら、バックオフィスを『協働化』を推進してゆくという国の方針は大いに納得できます。

介護業界、特に、訪問介護事業所において、フロントオフィスこそが介護であるといった意識が強すぎることと、バックオフィスの重要性が軽視されていること、フロントオフィスとバックオフィス間の柔軟な連携が不足、もしくは連携の重要性が認識されていないことが最重要な課題だと思えるのです。

小規模事業所が多い訪問介護事業業界だからこそ、フロントオフィスとバックオフィスといった2つの領域の重要性を認識した上で、人の移動や連携を柔軟におこなうことができる『意識改革』が最重要課題だと感じるのです。

介護業界における生産性向上の要はバックオフィスの改革にあります。深刻な人材不足に見舞われている訪問介護事業において、バックオフィスに対する視点のシフトと、フロントオフィスとバックオフィスを含めて、それら全体が『介護』であるとの認識を、働く人も皆が持つことがこれからの時代に必要不可欠なのだと思うのです。

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