日本の介護、新たな局面へ
データで見る、訪問介護と外国人材活用の最前線
避けられない現実:深刻化する介護人材不足
日本の急速な高齢化は、介護現場に深刻な人材不足をもたらしています。特に、利用者の生活に密着する訪問介護の現場では、その影響が顕著です。
2025年度までに不足する介護人材
約55万人
年間約6万人のペースで確保が必要な計算 (平成28年度比)
訪問介護事業所の悲鳴
調査対象の半数以上が「人材不足」を実感しており、そのうち約9割が「採用難」を理由に挙げています。
急増する外国人材:特定技能「介護」の現状
人手不足を補う切り札として期待される「特定技能」制度。介護分野での受け入れは、この2年で驚異的な伸びを見せています。
10倍
わずか2年での急成長
特定技能「介護」の在留者数は、2021年3月の約1,700人から2023年3月には約17,000人へと急増。介護現場での需要の高さを示しています。
政策の変遷:国際協力から労働力確保へ
外国人介護人材の受け入れ制度は、時代と共にその目的を変化させてきました。その歩みは、日本の介護が直面する課題の深刻化を映し出しています。
2008年:経済連携協定 (EPA)
二国間経済連携の一環として、インドネシア等から介護福祉士候補者の受け入れを開始。当初の目的は技能移転や国際貢献であり、労働力確保が主眼ではありませんでした。
2017年:技能実習制度・在留資格「介護」
技能実習制度に「介護」職種が追加。同時に、介護福祉士資格を持つ留学生向けの在留資格「介護」が創設され、人材確保への道が広がりました。
2019年:特定技能「介護」創設
深刻な人手不足に直接対応するため、明確に「労働力の確保」を目的とした在留資格「特定技能」がスタート。即戦力となる人材の受け入れが可能になりました。
2025年:訪問介護、解禁へ
そして今、これまで原則不可だった訪問介護分野での就労が、厳格な条件のもとで解禁。介護人材活用は新たなステージへと進みます。
訪問介護への道:厳格な要件
利用者の自宅というプライベートな空間で、一人でサービスを提供する訪問介護。安全性と質を担保するため、外国人材には高いレベルの要件が課せられます。
ルート1:経験者
介護事業所での
実務経験1年以上
訪問介護向けの
追加研修を修了
訪問介護サービスへ
ルート2:高い日本語能力を持つ者 (特例)
実務経験1年未満だが
日本語能力試験N2相当以上
利用者ごとに長期間の同行訪問
(例:週1回利用なら半年間)
訪問介護向けの
追加研修を修了
訪問介護サービスへ
※上記に加え、特定技能「介護」の基本要件(介護技能評価試験、日本語N4以上等)を満たす必要があります。
受け入れ事業所の責務
外国人材が安心して能力を発揮し、利用者が安全なサービスを受けるために。事業所側にも万全のサポート体制が求められます。
🤝
利用者への説明と同意
外国人材が訪問する可能性について書面で説明し、署名を得ることが必須です。
📱
ICTによる連絡体制
緊急時に備え、スマートフォン等で即座に連絡が取れる環境を整備します。
📈
キャリアアップ計画
本人の希望を踏まえ、資格取得支援など具体的な成長の道筋を示します。
🛡️
ハラスメント対策
相談窓口の設置など、あらゆるハラスメントから人材を守る措置を講じます。
OJT
実務を通じた訓練
初期は責任者が同行し、利用者とのコミュニケーションや緊急時対応を指導します。
❤️
総合的な生活支援
住居確保や各種契約の支援など、日本での生活基盤を支える計画が義務付けられます。
乗り越えるべき3つの壁
外国人材の活用は希望の光ですが、持続可能な成功のためには、現場が直面する大きな課題を乗り越えなければなりません。
① 言語・文化の壁
最も大きな課題。単なる意思疎通だけでなく、利用者の安全確保や信頼関係の構築に直結します。「やさしい日本語」の使用や異文化理解研修など、双方向の歩み寄りが必要です。
② 定着支援の重要性
労働力としてだけでなく、一人の人間として受け入れ、キャリアパスやメンタルヘルスケア、生活支援など、長期的に日本で活躍できる環境整備が定着のカギを握ります。
③ 国際的な人材獲得競争
近隣アジア諸国の経済成長に伴い、日本の魅力が相対的に低下する懸念があります。給与水準を含む労働条件の改善は、「選ばれる国」であり続けるために不可欠です。
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