
生産性向上の第一歩!訪問介護事業所が「タイムスタディ」で変わる理由
「毎日忙しいのに、なぜか利益が出ない…」「ヘルパーさんの負担を減らしたいけど、どこから手を付ければいいかわからない…」
そんな悩みをお持ちの訪問介護事業所の管理者や経営者の方へ。その課題を解決するヒントは、日々の業務時間を「見える化」することにあります。
今回は、訪問介護事業所の生産性向上に不可欠な「タイムスタディ調査」について、その意義や効果、そして具体的な調査項目を解説します。
タイムスタディとは? 業務時間の「見える化」がもたらす効果
タイムスタディとは、簡単に言えば、スタッフが一日の中で「何に」「どれだけの」時間を費やしているかを詳細に記録し、分析することです。この調査を通じて、以下の3つの重要なことが明らかになります。
- 利益を生む時間とそうでない時間の割合
- デジタル化によって削減できる業務と、削減が難しい業務
- スタッフの業務負担の偏り
多くの訪問介護事業所では、実際にサービスを提供している時間(直接支援)だけでなく、移動時間、事務作業、会議など、目には見えない業務が膨大な割合を占めています。タイムスタディを行うことで、それらの「見えない時間」を明確にし、どこに無駄があるのか、どこを改善すれば効率が上がるのかを具体的に把握できるようになります。
なぜ今、タイムスタディが必要なのか?
介護業界全体で人材不足が深刻化する中、限られたリソースで質の高いサービスを維持し、さらに利益を確保するためには、生産性の向上が急務です。
しかし、「なんとなく忙しい」という感覚だけでは、具体的な改善策は立てられません。タイムスタディという客観的なデータに基づいた分析を行うことで、以下のような具体的なアクションが可能になります。
- 業務効率の向上:無駄な会議や事務作業を洗い出し、効率的なプロセスに改善できます。
- 人件費の適正化:スタッフの業務内容を詳細に把握することで、適正な人員配置やシフト調整が可能になります。
- 利益率の改善:利益を生まない間接業務を削減し、直接支援に充てる時間を増やすことで、事業所の収益向上につながります。
- 働きやすい環境づくり:特定のスタッフに業務負担が偏っていないかを確認し、公平な業務配分を行うことで、離職率の低下にも貢献します。
タイムスタディ調査の業務項目の例
以下の項目は、訪問介護事業所におけるタイムスタディ調査の項目例です。
■ 直接業務
- 直接支援:身体介護や生活援助など、報酬が発生するサービス提供。
- 同行訪問:新人の指導や引継ぎなど、給付を伴わない訪問。
- 直接支援以外の訪問:契約、状況確認、利用者や家族とのコミュニケーションなど。
■ 移動
- 直接支援に係る移動:サービス提供のための移動。
- 直接支援に係らない移動:担当者会議、集金、他事業所への移動など。
■ 間接業務
- トラブル対応・突発業務:クレーム、事故、緊急対応など、予期せぬ業務。
- 利用者関係事務:計画書作成、シフト調整、記録、実績確認など。
- 会議等資料作成:運営基準で定められた会議資料の作成や準備。
- 事業所内会議:研修、各種委員会など。
- 事業所外会議:担当者会議など。
- アナログ事務:請求書や領収書の送付など、紙ベースの事務作業。
- 備品管理・環境整備:備品の発注、清掃、書類整理など。
■ 待機・休憩
- 休憩・待機:休憩時間や、次の訪問までの待機時間。
これらの項目を基に、スタッフ一人ひとりがどの業務にどれくらいの時間を費やしているかを記録することで、事業所の課題が浮き彫りになります。
デジタル化で削減できる業務、できない業務
タイムスタディの結果は、業務のデジタル化を進める上での羅針盤にもなります。
- デジタル化で削減できる業務
- 利用者関係事務(記録、実績確認、シフト調整):ICTツールや介護ソフトを導入することで、手書きの記録や電話でのシフト調整にかかる時間を大幅に削減できます。
- アナログ事務(請求書・領収書送付):電子請求やオンライン決済システムを導入することで、郵送や手作業の負担がなくなります。
- 会議等資料作成:共有フォルダやクラウドサービスを活用することで、資料作成や共有の効率が上がります。
- デジタル化が難しい、または削減すべきでない業務
- 直接支援:対人サービスである介護は、ヘルパーの温かい手や言葉が必要不可欠です。
- トラブル対応・突発業務:利用者の状況や緊急事態への対応は、人間でなければ対応が難しい部分です。
- 同行訪問、直接支援以外の訪問:利用者やご家族との信頼関係を築くための重要な時間です。
最後に
タイムスタディは、業務の「見える化」を通じて、事業所の「利益」と「サービスの質」の両方を向上させるための第一歩です。
ぜひ、今回紹介した項目を参考に、日々の業務を見直してみてください。小さな一歩が、事業所の大きな成長につながります。
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