看護介護職の一斉ストライキ〜他産業の大幅な賃上げで今、介護業界で起きていること

去る3月13日、大幅な賃上げを求めて、医療や介護の現場を支える職員でつくる日本医療労働組合連合会は全国一斉ストライキを実施しました。約600の事業所が参加し、1000を超える事業所がストライキ決議をあげました。

他産業における大幅な賃上げや大卒初任給30万円超など、深刻な人手不足を背景に、大企業を中心に賃上げが行われています。

介護業界でもSOMPOケアは、2025年4月から介護職員の賃金を引き上げており、公的介護保険以外の収入を増やすことで、2030年度までに介護職の平均賃金を全産業平均まで引き上げることを目指すとしています。
介護事業所でも、賃上げによる人材確保競争が激化してきています。

介護職員の給与は介護報酬が原資になります。訪問介護事業であれば、サービスに入った時間のみが報酬の対象になります。
厚生労働省も示している通り、例えば、1時間の身体介護の報酬単価や45分の生活援助の報酬単価は、それぞれ1時間、30分の時給と連動したものではなく、あくまでもサービスごとの報酬単価になります。事業者は、この報酬単価の合計から人件費やオフィス等の間接費用、社会保険料などを工面します。

特に、訪問介護においては利用者宅から次の利用者宅までの移動時間に係る時給も介護報酬の中から支払わないといけません。移動時間は業務時間に含まれる、と言うのが正しい解釈なのです。

ところで、同じ時間相当の介護報酬でも、身体介護は単価が高く、生活援助の単価は低く設定されています。
特段の合理的な理由がない限り依頼を断ってはならないとされていますが、賃上げの原資を高くするために、今、身体介護は受けるが生活援助は受けない、と言ったあからさまな状況になっています。
受諾義務があるとは言え、国もこの状況に規制を入れることは難しいでしょう。

他記事でも紹介している移動支援ですが、市町村事業のため、自治体によっては国の介護報酬より単価が低くなっています。移動支援はとても重要な仕事で、社会的な意義があるものですが、最近はあからさまに引き受ける事業者が激減しています。

賃上げするには、各種加算を取ることに加え、単価の高いサービスを中心に受諾し、ヘルパーの稼働率を高めることとイコールです。その上で稼働率を高めるための間接義務に係る時間をデジタル化によって効率化するかが肝になります。

こうした背景があり今、利用する人にとっても、働く人にとっても、法人や事業者にとっても、環境が激変しています。
介護保険の次の改正は2027年になります。それに向けての議論も活発化しています。
それまでに、ある程度、介護業界自体の再編が進むことが予想されます。そして次期介護保険の制度改正では、これまでの改正とは次元が異なる改正になることも予想さるます。

今、日本社会全体も、世界も激変しています。その変化は、介護に携わる私たちにとっても無縁ではありません。
私たちも決められた仕事、与えられた仕事をただするのではなく、激変する社会に目を向けながら活動してゆくことが求められます。

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