介護事業所の不正は見て見ぬふりはしない

 介護保険や障害福祉サービスの指定を受けた事業所は、6年に1回、保険者か指定権者からの運営指導を受け、制度通りに運営されているか、不正請求等はないかといった検査を受けることになっています。ただ、実施率は低く、運営基準や加算・減算要件を理解しないまま事業運営を続けてしまっている事業所も少なくないのが現状です。

 実際には提供していないサービスを提供したものとして介護報酬を請求するのは明らかな不正請求なのですが、各種加算や減算の要件を満たさないまま加算を請求したり減算しないで請求してしまった場合も不正請求になります。特に、処遇改善加算等は実績報告書の提出が義務付けられていますので、加算要件を満たさないまま実績報告書を提出してしまった場合には虚偽報告となり言い訳が効かない事態となってしまいます。

 もちろん、間違えて請求してしまうことはあります。その場合は、事業所内で発覚した時点で速やかに過誤申請をしなければなりません。

 運営指導の際に不正請求となっている事案が発覚し、自主的な過誤申請をしなかった場合は+40%の重加算税が付与されてしまうため、事業所の存亡が危うくなる事態にもなりかねません。そうなれば利用者はもちろん、職員に対しても多大な損害が生じてしまいます。

 もし、自事業所内で運営基準違反や加算・減算要件を満たしていないことを知ってしまったら黙っていることは禁物です。口にするとパワハラを受けてしまう場合もあるかもしれませんが、もし事業者が何らかの行政処分を受けた場合、自分に対しても行政処分が下る可能性もあります。

 以下、古い資料ですが重要な内容を含んでいますので注意してください。「事業所の不正は見て見ぬふりはしない」が鉄則です。

■「平成28年度厚生労働省老人保健健康増進等事業『介護保険法に基づく介護サービス事業者に対する行政処分等の実態及び処分基準例の案に関する調査研究事業』報告書
■「介護保険最新情報vol.6『介護保険法上の事後規制について』

1(指定等の際に審査される事項)
指定や更新の申請に際し、指定や更新が受けられない事由が追加されたそうですが、どのような点が追加されたのでしょうか。
(答)
従前は、事業者が事業の指定の基準を満たし、適正な事業運営が可能かどうかを審査しておりましたが、介護サービスの質を確保するという観点から不正の再発の防止のため、指定等の要件の見直しを行いました。具体的には、指定等の欠格事由の対象者に法人役員等を追加し、また、下記の要件を追加しました。
・禁錮以上の刑を受けて、その執行を終わるまでの者
・介護保険法その他保健医療福祉に関する法律により罰金刑を受けて、その執行を終わるまでの者
・指定取消から5年を経過しない者
・指定取消処分の通知日から処分の日等までの間に事業廃止の届出を行い、その届出日から5年を経過しない者
・5年以内に介護保険サービスに関し、不当又は著しく不正な行為をした者
指定や更新の際に、これらに該当する者がいる場合は、新たな指定は受けられず、また、更新がされないため、指定の有効期間の満了とともに介護保険上の介護サービス事業を存続できなくなります。

2(役員等の範囲について)
事業者だけでなく、役員等が指定・更新の欠格事由に該当する場合にも指定・更新を受けられないとのことですが、「役員等」の具体的な範囲はどこまででしょうか。例えば、訪問介護事業所における管理者及びサービス提供責任者は「役員等」に含まれるのでしょうか。
(答)
介護サービス事業者の指定等における欠格事由・取消事由(指定取消から5年を経過しない者であるとき等)にある「役員等」の範囲については、次のとおりです。
「役員等」の範囲
① 法人でない病院等の場合は、医療法及び薬事法で規定されている管理者
② 法人である場合は、
A.役員
イ 業務を執行する社員・取締役・執行役又はこれらに準ずる者
※「これらに準ずる者」とは具体的には
・合名会社、合資会社、合同会社では会社法で規定される社員
・ 株式会社では会社法で規定される取締役等
・ 社会福祉法人→ 社会福祉法で規定される役員
・ 医療法人→ 医療法に規定される役員 など
ロ 相談役、顧問等の名称を有するかどうかは問わず、イに掲げる者と同等以上の支配力を法人に対し有するものと認められる者
※相談役、顧問等といった実質上法人の経営に支配力を有する者が想定されますが、法人の経営に対しどの程度支配力を有しているかは、都道府県等において個別の事例に応じて適切に判断することになります。
B.その事業所を管理する者その他の政令で定める使用人
・事業所の管理者(基準省令等で規定される管理者と同じ)
従って、訪問介護事業所の管理者は、「役員等」の範囲に含まれますが、原則として、サービス提供責任者は含まれません。

※施設長や所長等の事業所トップは行政処分の対象となる可能性もありますので、ご注意ください。

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