
訪問介護事業所で、職員の給与を上げ、経営基盤の安定・強化をするためには可能な限り各種の加算や補助金・支援金を取得・活用しなけらばなりません。介護事業の運営は法定ビジネスなので、決められた基準を守らないと保険料や税金、利用者負担からなる介護報酬を受け取ることができなくなるため、法律や制度に精通していなければできない事業なのも事実です。
訪問介護事業所においては、『処遇改善加算』と『特定事業所加算』が該当します。
『処遇改善加算』は、介護業務に直接従事する職員の待遇改善を目的とした制度で、介護職員の賃金改善や職場環境の整備を支援するため加算になります。
一方『特定事業所間加算』は、質の高い人材を揃え質の高いサービスを提供し、介護度の高い利用者にサービスを提供している事業所を評価するため加算になります。
『研修』一つとっても、年間を通じて計画的に進めなければなりません。基本報酬を受け取るために介護職員に対して実施しなければならない必須となる研修が『法定研修』です。テーマが決められているため、毎年同じテーマで研修を実施しなければならないのですが、逆に捉えると、知識や技術を常にアップデートしてゆかなければならない時代性を象徴する研修になります。毎年同じテーマ縛りが逆に企画者としては面白さを感じるところでもあります。(以下の表は、訪問介護に関する内容を中心にまとめています)
法定研修(訪問介護) | テーマ |
認知症と認知症ケア | |
マナーと接遇 | |
倫理と法令遵守 | |
プライバシー保護の取り組み | |
事故対応と再発防止 | |
緊急時の対応 | |
感染症等の予防、まん延防止 | |
高齢者虐待防止 | |
ハラスメントの防止、対策 | |
苦情対応 | |
業務継続計画(BCP)感染症編の研修 | |
業務継続計画(BCP)自然災害編の研修 | |
障害福祉に関するテーマ(障害者差別解消法・合理的配慮など)※障害福祉サービスを提供している場合 |
令和3年度改正(令和6年度改正含む)から法定研修に加えて基本報酬を得るために必要になった研修等に、以下のものがあります。基本報酬を受けるために必須です。
法定研修以外で必須の研修(法定研修と重複あり) | 内容・備考 |
BCP自然災害編の研修 | 感染症対策の研修と一体的に実施可 |
BCP自然災害編の訓練 | 防災訓練(机上訓練可)として実施 |
感染症対策の研修 | 法定研修と兼可 |
感染症対策の訓練 | BCP感染症編の訓練と一体的に実施可 |
BCP感染症編の研修 | 感染症対策の研修と一体的に実施可 |
BCP感染症編の訓練 | 感染症対策の訓練と一体的に実施可 |
虐待防止の研修 | 法定研修と一体的に実施可 |
身体拘束適正化の研修 | 訪問介護は虐待防止の研修と一体的に実施可 |
加算を取得する場合の研修は、基本報酬に含まれる『法定研修』に加えて、特定事業所加算で求められる『個別研修』と、処遇改善加算で求められる『キャリアパス要件Ⅱ』の研修の実施が必要になります。ただ単に実施すれば良いというわけではなく、趣旨に沿った年間計画を立てて、実施後は評価をする必要があります。それらは全て記録として残さなければなりません。
加算 | 加算の要件研修 | 研修の内容 | 年度末評価 |
処遇改善加算 | キャリアパス要件Ⅱ研修 | 職位に応じた能力を身に付け評価するための研修(登録ヘルパー、サービス提供責任者、管理者といった「職種」ではなく「職位」であることに注意) | 職位に応じた能力評価 |
特定事業所加算 | 個別研修 | 介護職員・サービス提供責任者ごとに研修の目標やテーマを決めて実施 | 個々の目標に応じた達成度評価 |
また、『特定事業所加算』においては月に1回以上、サービス提供責任者が主催し全職員が参加する『会議』の実施が必要になります。会議の内容の詳細は定められてはいませんが、加算の趣旨に従ってテーマ自体に縛りがあります。
定例会議 | 開催頻度等(オンライン可) | テーマ(下記のいずれかをテーマとした会議) |
特定事業所加算における会議 | 月1回以上,全職員参加(複数回開催可)※議事録は開催回ごとに保存 | □利用者に関する情報 |
□サービス提供に当たっての留意事項の伝達 | ||
□訪問介護員等の技術指導 |
一方、『処遇改善加算』では、介護職員に対して計画そのものの周知が必要になります。
処遇改善加算における周知 | 周知内容 |
処遇改善計画の周知 | 届出した計画書そのものの説明と周知 |
キャリアパス要件Ⅰの周知 | 事業所における職位と職位ごとの賃金体系の周知 |
キャリアパス要件Ⅱの周知 | それぞれの職位において必要となる研修の周知(年間研修計画の周知) 事業所における資格取得制度の周知 |
キャリアパス要件Ⅲの周知 | 事業所で整備した昇給の仕組みの周知 |
加えて、処遇改善加算を取得するためには『職場環境等要件』を満たさなければならず、それらの計画や実施、周知等も必要になります。以下はその一例です。職場環境等要件は、選択した項目の具体的な取り組み内容を、ホームページ等で公表(見える化)しなければなりません。
職場環境等要件における周知事項 | 周知内容(届出の職場環境等要件によって異なる) |
事業所の経営理念やケアの方針・人材育成方針等の周知 | |
キャリアアップのための研修受講に関する事業所の制度の周知 | |
メンタルサポート等の事業所の制度と利用方法の周知 | |
家族の介護など仕事とプライベート両立のための事業所の休業制度の周知 | |
正職員や常勤ヘルパー登用など事業所の制度の周知 | |
事業所の有給休暇取得促進制度の周知 | |
事業所の福利厚生制度や相談窓口等の周知 | |
健康診断受診の説明 | |
ストレスチェック制度の実施の目的と意義・実施方法や時期の周知 | |
事業所における生産性向上の取り組みの周知 | |
事業所におけるケアの良い事例や利用者や家族からの感謝事例の伝達 | |
介護保険制度の理念等の研修 | |
障害福祉サービスの理念等の研修 | |
ヘルパー同士が直接集まって交流する機会の時期や場所等の周知 | |
身体介護の介護技術研修・実習 | |
福祉機器の取り扱い方法の研修・実習 |
以上ですが、そもそも事業所運営において、各種の周知や研修・訓練をするためには委員会を開催して検討しなければなりません。開催間隔も決められています。
委員会等開催結果の周知 | 周知内容 |
BCP自然災害編策定委員会の開催結果の周知 | |
BCP感染症編策定委員会の開催結果の周知 | |
感染症対策委員会の開催結果の周知その①(6月に1回) | |
感染症対策委員会の開催結果の周知その②(6月に1回) | |
虐待防止委員会の開催結果の周知 | |
身体拘束適正化委員会の開催結果の周知 | |
ハラスメント委員会の開催結果の周知 | |
事故ヒヤリハット再発防止委員会の開催結果の周知 |
さらに加算取得のためではなく、労働安全衛生法の改正に連動して、整備や実施が必要となる項目も多々あります。熱中症対策は労働環境により、取り組みが必須となる場合があります。また、ストレスチェックの実施は現在、50人以上の事業場となっていますが、最長2028年5月までに50人未満の事業場でも義務化されますので準備を進めてゆく必要があります。
改正労働安全衛生法により求められる事項 | 実施内容 |
熱中症予防の取り組みと実施施策の周知 | |
ストレスチェックの意義と実施に当たっての留意点の周知 |
ストレスチェックの実施は経過措置がありますが全事業所対象で義務化になりますので、準備を進めてゆく必要があります。手探りの部分もあると思いますので、可能な限り試験的にでも実施してゆましょう。
ストレスチェック | 実施内容 |
実施要綱の作成 | |
実施計画の策定 | |
実施者の選定と依頼 | |
実施事務従事者の選定と依頼 | |
実施方法等の確認 | |
職員への実施の意義と実施時期、実施方法等の周知 | |
ストレスチェックの実施 | |
集計と分析 | |
各職員へのストレスプロフィールの送信 | |
高ストレス者への対応 | |
実施記録のとりまとめ | |
必要に応じた職場環境改善への取り組み検討 |
また、周知のための事業所内委員会の開催だけではなく、事業所運営において加算取得に際して必須となる検討主体の設置例を以下にまとめました。
委員会・ミーティング等 | 話し合うべき内容の例 |
サービス提供責任者会議(労働安全衛生法) | ストレスチェックに関する話し合い~ストレスチェックの実施者の選定と実施方法や実施時期、実施事務従事者等に関する話し合い |
サービス提供責任者会議(処遇改善加算) | 各サ責の有給休暇取得状況の確認 |
個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善に関する話し合い | |
ケアの好事例や利用者やその家族からの謝意等の情報共有 | |
生産性向上委員会(処遇改善加算) ※取組内容は「生産性向上ガイドライン」に基づく | 経営層から全サービス提供責任者への取り組み開始の宣言、プロジェクトチームから意義や生産性向上イメージの伝達、プロジェクトチームから今後の取り組み内容やスケジュール等に関する伝達と質疑応答、話し合い |
プロジェクトチームメンバーからeラーニングや外部研修結果の報告、5S活動・業務手順書の作成等・ICT化など生産性向上の取り組みの話し合い | |
プロジェクトチームから課題の把握や業務時間の見える化などの今後の取り組みの提案、実施方法やスケジュール等の話し合い(この後に全サ責を対象にした課題把握調査やタイムスタディー調査の実施 | |
プロジェクトチームから抽出された課題とタイムスタディー調査結果の報告と生産性向上のための取り組みの話し合い | |
プロジェクトチームから当該年度の取り組み結果の成果の報告と次年度の取り組みの話し合い | |
生産性向上に関するプロジェクトチーム(処遇改善加算) ※取組内容は「生産性向上ガイドライン」に基づく | プロジェクトチームメンバー各々が生産性向上のイメージを考える+メンバー全員で話し合うことを繰り返す |
生産性向上委員会設置要綱の作成、今後の取り組み内容やスケジュール等の検討 | |
生産性向上に関するeラーニングや外部研修に関する話し合い | |
課題の把握やタイムスタディー調査などの改善計画の作成、担当決め、方法の検討、スケジュールの検討など | |
課題の把握やタイムスタディー調査の実施状況についての確認と話し合い | |
当該年度の取り組み結果の成果の検証と次年度の取り組みの話し合い |
上記の研修や会議、委員会等の開催は一例ですが、これらを計画的に計画年度を通じて実施することが必須となります。まとめられるものは一体的に実施して、計画的に実施することが重要です。前年度末までに年間計画を作って、当該年度当初からスムーズに実施してゆけるよう整えておく必要があります。
定例の『会議』は、もともと特定事業所加算で求められる要件の一つなのですが、月1回以上必ず開催するのであれば、他の要件を満たす場として積極的に活用しましょう。逆に言えば、各種の運営基準や要件を満たそうとすれば自ずと特定事業所加算の会議要件も満たせてしまうことになります。←コレ重要です
できるだけ効率よく、重複や無駄を省いて、いかにサクサク実施してゆくのか、エンジニア志向の職員にはたまらなく面白い業界ですね💦
直接支援も事務作業も、楽しすぎる介護業界の『今』です。。。
下記のフォーマットはあくまでも一例です。各種の研修や会議、委員会の開催等を表にしてまとめてゆきます。過不足なく年間を通じて未実施になる項目が無いようにしないといけません。記録は、一体的に開催したとしても要件ごとに趣旨が異なりますので、別々に残しておきましょう。(未実施の項目があった場合、要件を満たさなかったとして返還が生じる可能性があります。)
年間スケジュールは、以下のような感じで、皆でワイワイ話し合って楽しみながら作ってゆきましょう‼
■研修の年間スケジュール(表中の職位は例です)
202×年 | 職位 | 職種 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 評価/考課 |
管理 | 管理者 | ||||||||||||||
管理 | サ責 | ||||||||||||||
上級 | 〃 | ||||||||||||||
中級 | 〃 | ||||||||||||||
初級 | 〃 | ||||||||||||||
上級 | 常勤 | ||||||||||||||
中級 | 〃 | ||||||||||||||
初級 | 〃 | ||||||||||||||
上級 | 登録 | ||||||||||||||
中級 | 〃 | ||||||||||||||
初級 | 〃 |
■会議の年間スケジュール(表中のテーマは例です)
202×年 | 議題 | 特定事業所加算に係るテーマ | 処遇改善加算に係るテーマ | 職場環境等要件に係るテーマ | 各種委員会開催結果の周知 | 年間研修計画に含まない研修・訓練等 | その他の周知等 | 事業所・法人からの報告や伝達等 | ※各種委員会の開催 | 開催方法 (欠席者に対する措置) |
4月 | ・議題①_処遇改善加算の周知 ・議題②_生産性向上向上のための事業所の取組 議題③_介護技術指導 議題④_今年度の経営方針 | □利用者情報 □サービス提供時留意事項 □技術指導 | ・処遇改善計画の周知 ・キャリアパス要件の周知 | — | 生産性向上委員会からのお知らせ | — | ー | 本年度の法人の経営方針のお知らせ | ・幹部ミーティング ・生産性向上委員会 | 事業所本部で開催+動画生配信(配信視聴者はチャット参加) ※当日欠席者には録画動画の配信+ビジネスチャット(必要に応じてサービス提供責任者からコメント) |
5月 | ・議題①_感染症拡大防止のための机上訓練 ・議題②_熱中症対策のための事業所の取組 ・議題③_サービス提供に当たっての留意事項の伝達 議題④_ストレスチェックの実施について | □利用者情報 □サービス提供時留意事項 □技術指導 | — | ストレスチェックの意義と実施方法、時期等の説明 | 感染症対策委員会開催結果の周知 | 感染症拡大防止訓練 | 熱中症対策への取組(改正労働安全衛生法) | — | ・感染症対策委員会 ・熱中症対策委員会 ・ストレスチェック実施検討委員会 | YouTube限定公開ライブ配信+アーカイブ参加 ※ストレスチェックは、事業所協働化で内製したアプリをGoogle Firebaseにホスティングしたものを使用 |
6月 | ・議題① ・議題② ・議題③ ・議題④ | □利用者情報 □サービス提供時留意事項 □技術指導 | ||||||||
7月 | ・議題① ・議題② ・議題③ ・議題④ | □利用者情報 □サービス提供時留意事項 □技術指導 | ||||||||
8月 | ・議題① ・議題② ・議題③ ・議題④ | □利用者情報 □サービス提供時留意事項 □技術指導 | ||||||||
9月 | ・議題① ・議題② ・議題③ ・議題④ | □利用者情報 □サービス提供時留意事項 □技術指導 | ||||||||
10月 | ・議題① ・議題② ・議題③ ・議題④ | □利用者情報□サービス提供時留意事項□技術指導 | ||||||||
11月 | ・議題① ・議題② ・議題③ ・議題④ | □利用者情報 □サービス提供時留意事項 □技術指導 | ||||||||
12月 | ・議題① ・議題② ・議題③ ・議題④ | □利用者情報 □サービス提供時留意事項 □技術指導 | ||||||||
1月 | ・議題① ・議題② ・議題③ ・議題④ | □利用者情報 □サービス提供時留意事項 □技術指導 | ||||||||
2月 | ・議題① ・議題② ・議題③ ・議題④ | □利用者情報 □サービス提供時留意事項 □技術指導 | ||||||||
3月 | ・議題① ・議題② ・議題③ ・議題④ | □利用者情報 □サービス提供時留意事項 □技術指導 |
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