
介護現場で働く皆さん、日々の業務、本当にお疲れ様です。人手不足が叫ばれる中、利用者さんの生活を支える重要な役割を担う皆さんには、頭が下がります。しかし、残念ながら、中には法令や運営基準を軽視する、あるいは意図的に守らない事業所が存在するのも事実です。
もしあなたが、管理者や経営者のそうした不適切な行為に気づき、勇気を出して指摘した結果、パワハラを伴う退職勧奨を受けてしまったら……。今回は、そんな悲しい事例が招く事業所の末路と、そこで働くあなた自身の未来について、介護福祉系のブログ記事として考えてみたいと思います。
勇気ある指摘が招く「退職勧奨」という名のパワハラ
訪問介護事業所のサービス提供責任者(以下、サ責)であるAさんの事例です。Aさんは、利用者さんの身体状況や必要なケアプランに合わない不適切なサービス提供が常態化していることに気づきました。具体的には、
- 訪問時間の水増し請求: 実際には30分しかサービス提供していないのに、1時間分として請求しているケースが複数あった。
- 無資格者による身体介護: 介護職員初任者研修すら修了していない者が、身体介護を行っていた。
- アセスメント・ケアプランの形骸化: 利用者さんの状態変化に対応しない、古いケアプランを使い続けている。
- 加算の要件を満たしていない・減算しなければいけないのにしていない: 処遇改善加算や特定事業所加算の要件を満たしていないのにも関わらず、要件を満たしているとして請求している。または、減算対象になるのにも関わらず満額で請求している。
Aさんは、これらの行為が介護保険法や運営基準に明確に違反していることを重く見て、まずは管理者に改善を求めました。しかし、管理者は「そんなことはない」「大した問題ではない」と取り合わず、改善の兆しは見えません。
そこでAさんは、意を決して経営者に直接、これらの法令違反を指摘しました。ところが、経営者の返答は驚くべきものでした。
「そんなにうちのやり方に不満があるなら、辞めてもらうしかないね。君みたいな面倒な人間は、うちにはいらないんだよ。」
これ以降、Aさんは担当利用者数を急激に減らされたり、他の職員の前で侮辱的な言葉を浴びせられたり、必要のない業務を無理やり押し付けられたりといったパワハラを受けるようになりました。精神的に追い詰められたAさんは、結局、退職せざるを得なくなりました。
法令違反を放置する事業所の「末路」
Aさんのような勇気ある指摘を握りつぶし、法令違反を放置し続ける事業所には、どのような未来が待っているのでしょうか。
- 監査による指導・報酬返還・指定取り消し:当然のことながら、介護保険サービスを提供する事業所は、定期的に自治体や国保連による監査を受けます。Aさんの事例のような不正請求や運営基準違反が発覚すれば、多額の介護報酬の返還を命じられます。悪質性が高いと判断されれば、事業所の指定取り消しという最も重い行政処分を受けることになります。指定取り消しとなれば、その事業所は介護保険サービスを提供できなくなり、事実上、廃業に追い込まれます。
- 社会的な信用の失墜:行政処分が公表されることで、事業所の名前は世間に知れ渡り、社会的な信用は失墜します。利用者さんからの信頼はもちろん、地域の医療機関や他事業所からの連携も途絶え、新たな職員の採用も極めて困難になります。
- 職員の離職と人材の流出:不正やパワハラが横行する職場環境では、真面目に働く職員から見放されます。Aさんのように、法令遵守を訴えた職員が不当な扱いを受ければ、他の職員も「自分も同じ目に遭うかもしれない」と不安を感じ、次々と辞めていくでしょう。結果として、残るのは不正に加担する者や、他に働く場所がない者だけとなり、サービスの質は著しく低下します。
- 利用者さんへの影響:最も影響を受けるのは、当然ながら利用者さんです。不適切なサービス提供によって心身の健康を損なったり、急な事業所閉鎖によって安定した介護サービスを受けられなくなったりと、多大な不利益を被ることになります。
あなた自身を守るために、そして介護の未来のために
もしあなたが、今、法令違反や不適切な運営が行われている事業所にいて、それを指摘しようか迷っているのなら、決して一人で抱え込まないでください。
- 証拠の保全: 不正行為やパワハラの証拠(日時、内容、関わった人物、録音、メール、書類など)をできる限り記録し、保全しておきましょう。
- 外部機関への相談:
- 労働基準監督署: パワハラや不当な労働条件に関する相談。
- 自治体の介護保険課(高齢福祉課): 事業所の不正行為や運営基準違反に関する相談。匿名での通報も可能です。
- 弁護士: 法的なアドバイスや、場合によっては法的措置の検討。
- 労働組合: 労働者の権利を守るための相談。
- 転職の検討: 残念ながら、環境が改善されない場合は、自身の心身の健康を守るためにも転職を視野に入れることも重要です。ハローワークや介護業界に特化した転職エージェントを活用し、より健全な事業所を探しましょう。
介護の仕事は、誰にとっても必要な、社会を支える大切な仕事です。一部の不誠実な事業所のせいで、介護業界全体のイメージが悪くなることは、利用者さんにとっても、真面目に働く多くの介護職員にとっても不利益です。
勇気あるあなたの行動が、不正を正し、より良い介護の未来を築く一歩となるかもしれません。どうか、自分自身と、利用者さんのために、諦めないでください。
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