【参院選目前】介護福祉に携わる私たちの選択の視点:日本の課題と政策提言

7月20日の参議院選挙が目前に迫り、各政党が様々な政策を打ち出しています。私たち介護福祉に携わる者にとって、この選挙は単なる政治イベントではなく、日々の業務、そして日本の社会保障の未来に直結する重要な選択の機会です。感情論だけでなく、現在の日本が抱える構造的な問題点や課題を絡めながら、私たちがどのような視点で候補者や政党の政策を評価すべきか、コラムとしてまとめました。

まず、私たちの足元にある介護福祉現場の現状に目を向けましょう。

  • 人材不足と処遇改善の遅れ: 「きつい、汚い、危険」という3Kイメージに加え、他の産業と比較して低い賃金水準が常態化しており、慢性的な人材不足が続いています。処遇改善は喫緊の課題ですが、財源確保が常に壁となっています。
  • 社会保障制度の持続可能性: 少子高齢化が急速に進む日本では、年金、医療、介護といった社会保障費が年々膨らんでいます。消費税がその主要な財源の一つであることは前回の記事でも触れましたが、この増え続ける費用をどう賄い、制度を持続させていくのかは、国民全体の大きな課題です。
  • サービスの質の維持と向上: 財源や人材が限られる中で、利用者一人ひとりに質の高いケアを提供し続けることは容易ではありません。サービスの質の低下は、直接的に利用者の生活の質に影響します。
  • 地域間格差の拡大: 都市部と地方では、介護サービスの量や質、人材の確保状況に大きな差が生じています。住む場所によって受けられるケアに差が出ることは、公平性の観点からも問題です。

これらの課題を踏まえ、私たちは各党や候補者の政策をどのように評価すべきでしょうか。

  • 社会保障財源への具体的な言及: 「社会保障の充実」を掲げるのは当然ですが、その財源をどこから捻出するのか、具体的に示されているかが重要です。消費税、所得税、法人税、国債、歳出削減など、どの手段を重視し、それが私たちの生活や将来にどのような影響を与えるのかを冷静に見極める必要があります。
  • 介護福祉人材確保・定着策の具体性: 賃上げだけでなく、キャリアパスの明確化、研修制度の充実、職場環境の改善、テクノロジー導入による業務効率化など、多角的な視点での具体的な政策が提示されているかを確認しましょう。単なる「賃上げ」だけでなく、持続可能な人材育成・定着の仕組みがあるかどうかがカギです。
  • 地域包括ケアシステムの推進: 高齢者が住み慣れた地域で生活を続けられるよう、医療・介護・住まい・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築は不可欠です。各党がこのシステムをどのように強化し、地域間の格差を是正していくのか、具体的なアプローチに注目しましょう。
  • 予防・健康寿命延伸への投資: 介護が必要になる前の段階での予防医療や健康増進策への投資は、将来的な社会保障費の抑制にもつながります。各党が予防医療や健康寿命延伸にどれだけ力を入れているか、そのビジョンも重要です。
  • 家族介護者への支援: 在宅介護を支える家族への支援も忘れてはなりません。レスパイトケア(介護者の一時的な休息)、相談体制の強化、経済的支援など、家族介護者の負担を軽減する具体的な政策があるかを確認しましょう。

選挙期間中は、耳障りの良いスローガンや感情に訴えかける言葉が多く聞かれます。しかし、介護福祉の未来を考える上で重要なのは、それらの言葉の裏にある「数字」と「根拠」です。

  • 「〇〇をします」だけでなく、「そのために〇〇円の財源を〇〇から確保します」といった具体的な説明があるか。
  • 「〇〇を改善します」だけでなく、「その結果、〇〇が〇〇%改善される見込みです」といった具体的な目標が示されているか。
  • 過去の実績や、専門家の意見、公的なデータに基づいた議論がなされているか。

これらの視点を持つことで、私たちはより客観的に、そして現実的に各党の政策を評価することができます。

介護福祉の現場で働く私たちは、日本の社会保障制度の最前線にいます。日々の業務を通じて、制度の課題や利用者のニーズを最もよく理解している立場です。私たちの投票行動は、日本の社会保障の未来、ひいては私たちの生活、そして次世代の暮らしに大きな影響を与えます。

感情に流されることなく、冷静に、そして建設的な視点で各党の政策を吟味し、私たちの専門性と経験に基づいた「賢い一票」を投じることが、より良い社会を築く第一歩となるでしょう。

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