2026年2月8日:衆議院議員選挙–介護福祉の現場から②

2026年2月8日の衆議院議員総選挙を前に、私たちの社会には100年前の「あの時代」と似た空気が漂っている――。もしあなたがそう感じているなら、それは単なる既視感(デジャヴ)ではなく、歴史が繰り返す構造的なリスクを本能的に捉えているのかもしれません。

今回のブログ記事では、介護福祉という「共生」の最前線に立つ視点から、現在のポピュリズムと戦前・戦中の社会構造、そして私たちが守るべき「支え合いの歴史」について、客観的な事実に基づき考察します。


1. 「1930年代」と「2020年代」:経済不安が生む「単純化」の罠

歴史家たちが指摘する戦前(特に1930年代)と現代の共通点は、「長引く経済の停滞」と「既成政治への根深い不信感」です。

  • 1930年代: 昭和恐慌による農村の困窮。複雑な国際情勢や経済問題を「既得権益(政党や財閥)のせいだ」と断じる「昭和維新」の機運が高まりました。
  • 2026年現在: 「失われた30年」に加え、インフレと実質賃金の停滞。この閉塞感に対し、「消費税廃止」や「外国人排除」といった、複雑な因果関係を削ぎ落とした「ワンフレーズの解決策」が支持を集めています。

ポピュリズムの最大の特徴は、社会を「純粋な人々」と「腐敗したエリート(あるいは異分子)」に二分することです。戦前、それが「軍部による救国」という幻想に向かったように、現代では「排外的な自国第一主義」という形で噴出している可能性があります。

2. 介護・福祉の歴史は「排除」との戦いだった

介護福祉の現場に身を置く方なら実感されている通り、日本の社会福祉は「特定の誰か」を排除するのではなく、「誰もが直面するリスクを社会全体で薄める」という思想のもとに積み上げられてきました。

日本の社会保障の転換点

時代仕組みの性質思想
戦前・戦中救貧・軍事援護国家に貢献する者のための「恩恵」
1960年代〜措置制度行政が「施す」もの(利用者の選択権なし)
2000年〜介護保険制度社会的連帯(契約と権利)による「共生」

戦前の福祉は、国家への貢献(軍事)と表裏一体の「選別された救済」でした。しかし、今の私たちが享受している制度は、国籍や思想を問わず、弱さを抱える人間同士が支え合う「リベラルな社会契約」の結晶です。ポピュリズムが掲げる「選別」や「排除」は、この100年かけて築いた「福祉の近代化」を逆行させるリスクを孕んでいます。

3. 「純血主義」という経済的・物理的不可能性

「外国人を排除し、日本人の給与を上げれば解決する」という論理は、一見すると労働市場の需給バランスに基づいているように見えます。しかし、人口統計という「動かせない事実」を前にすると、その限界が露呈します。

  • 労働力の消滅: 日本の生産年齢人口は年間数十万人規模で減少し続けています。介護現場における有効求人倍率は依然として高く、これは単なる賃金の問題ではなく、「動ける人間が物理的に足りない」という現実です。
  • 多様性の寄与: 現在、介護現場を支える外国人人材の多くは、単なる「労働力」の補填ではなく、消費活動を行い、税や社会保険料を納める「地域社会の構成員」です。

戦前、日本は「自給自足のブロック経済」を夢見て破綻しました。現代において「労働の自給自足」を叫ぶことは、現場の崩壊を招くだけでなく、日本の経済的な孤立を加速させる恐れがあります。

4. 「財政破綻」の先に待つもの:歴史の教訓

「財源なき減税」がもたらす最悪のシナリオは、ハイパーインフレや国家債務の不履行(デフォルト)です。もし日本がIMF(国際通貨基金)の管理下に入れば、何が起きるかは歴史が証明しています。

  1. 社会保障の解体: 年金、医療、介護報酬は真っ先に「効率化」の名の元にカットされます。
  2. 極端な緊縮: 増税と歳出削減が同時に行われ、最も打撃を受けるのは低所得層や要介護者です。

かつての戦争が「行き詰まった経済の出口」として選ばれたように、現代のポピュリズムが「破綻への引き金」となり、結果として最も守るべき人々を窮地に追い込む。この皮肉な循環を食い止めるのが、「歴史に学ぶ有権者の理性的判断」です。


結びに:2月8日、私たちは「何」に投票するのか

「失われた30年」への怒りは正当なものです。しかし、その怒りの矛先を「他者(外国人や特定の層)」の排除や、「未来へのツケ(財源なき減税)」に向けてしまえば、私たちは先人が流した血と汗の上に築いた「共生社会の土台」を自ら壊すことになります。

介護の仕事が、目の前の一人の尊厳を守ることから始まるように、政治もまた、派手なスローガンではなく「持続可能な支え合いの仕組み」をいかに維持するかが本質であるはずです。

今週末、投票所へ向かう道すがら、100年前の日本と、100年後の日本に思いを馳せてみませんか。


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