
黎明期を支えてきたベテランスタッフにとって、ICT導入や厳格なルール化は「自分たちのこれまでのやり方(=真心)」を否定されたように感じてしまいがちです。
彼らは「機械」が嫌いなのではなく、「自分の誇りが数値化・管理されること」に抵抗を感じているのです。そこを解きほぐし、彼らを「味方」に変えるための「殺し文句」とコミュニケーション術をまとめました。
ベテランスタッフは、事業所の宝です。彼らが培った「技術」と「勘」を次世代に繋ぐために、新しい仕組みが必要なのだ ~ この文脈で語ることが、変化を「拒絶」から「継承」へと変える鍵になります。
1. 「管理」を「守り」に言い換える
ベテランは往々にして「記録なんて、しっかりやっていれば後回しでいい」と考えがちです。そこを、「あなたを守るための盾」という視点に切り替えます。
【殺し文句】
「〇〇さんがこれまでに救ってきた利用者様の数は、誰にも真似できません。でも今、制度が厳しくなり、『記録がない』というだけで、その尊い仕事がなかったことにされるリスクがあります。私は管理者として、〇〇さんの功績を誰にも否定させたくない。だから、一番確実な証拠(ICT)で、あなたの仕事を守らせてください」
2. 「面倒なこと」を「次世代へのギフト」にする
「今さらスマホなんて…」という拒絶反応には、彼らの「後輩思い」な一面に訴えかけます。
【殺し文句】
「実は、新しく入る若いスタッフたちは、〇〇さんのような『背中を見て覚えろ』が通用しない世代なんです。〇〇さんの素晴らしい技術や気づきを、動画やチャットで残しておくことは、この事業所の未来への『教科書』になります。 ぜひ、あなたの知恵を形にするのを手伝ってもらえませんか?」
3. 「効率化」を「利用者のため」に結びつける
事務作業を嫌うベテランには、「何のために時間を削るのか」という大義名分を提示します。
【殺し文句】
「今、紙の書類に追われている時間を15分だけ削れたら、その分、利用者様ともう一杯お茶を飲む時間が作れますよね。この新しい仕組みは、〇〇さんが利用者様と向き合う時間を『奪う』ものではなく、『取り戻す』ためのものなんです。」
実践:ベテランを巻き込む「スモールステップ」の踏み方
いきなり「明日から全員スマホで!」は、反発の火に油を注ぎます。以下の手順で「特別感」を演出しましょう。
- 「相談役」として最初に声をかける全体発表の前に、影響力のあるベテランに「実はこういう計画があるのですが、〇〇さんの視点から見て使いにくい点はなさそうですか?」と内々に意見を仰ぎます。「先に相談された」という事実が、彼らのプライドを満たし、協力的な姿勢を生みます。
- 「教わる」姿勢を貫く管理者が「教える」のではなく、「現場のベテランに、使い勝手を評価してもらう」という構図を作ります。
- 成功体験を共有する「〇〇さんがチャットで報告してくれたおかげで、サ責の指示がすぐ出せて、利用者様の体調変化に早く気づけました!」と、新しい仕組みがケアに貢献した瞬間を、大げさなほど褒め称えます。
エピローグ:システムに「血」を通わせるのは、彼らの手
どれほど優れたICTツールを導入しても、そこに打ち込まれる言葉に「愛」がなければ、福祉は冷たい作業になります。
黎明期を支えたベテランたちが、スマホの画面越しに「今日の〇〇さんは、少し笑顔が多かったです」と打ち込んでくれるようになったとき、そのシステムには初めて「血」が通います。
新任管理者のあなたの仕事は、古い道具(紙)を捨てさせることではなく、新しい道具(ICT)を、彼らの温かい手に馴染ませることです。


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