国の財政運営から見た介護保険・障害福祉の方向性


去る令和7年5月27日に国の『財政制度等審議会・財政制度分科会』が開催され、「激動の世界を見据えたあるべき財政運営」の建議が取りまとめられ、政府への要請が図られました。

介護や障害福祉分野においても、財政運営に関する基本的考え方に則り、持続可能な社会保障制度を構築する上での課題と今後の方向性について言及されています。

介護保険分野

介護分野では、保険給付の効率的な提供と負担の公平化が重要課題として挙げられています。

1. 保険給付の効率的な提供

  • 介護人材の状況と対応: 介護事業者は人材確保が困難な状況にあり、特に訪問介護事業者の経営状況は厳しいため、人材紹介会社への規制強化や訪問看護の適正化、入居者紹介手数料への対応が求められる。
  • 処遇改善加算の活用: 介護職員の処遇改善加算の活用を促進し、人材の定着を図る必要がある。
  • 介護支援専門員(ケアマネジャー)の状況と対応: 介護支援専門員の専門性と業務の質の向上、業務負担の軽減に向けた対応の検討。
  • 生産性向上: ICT機器の活用や人員配置の効率化などにより、介護現場の生産性向上が必須。
  • 職場環境整備: 介護職員が働きやすい職場環境の整備が不可欠。
  • インセンティブ交付金の活用: 自治体へのインセンティブ交付金を活用し、地域の実情に応じた取り組みを促すことが重要。
  • 要介護認定事務の改善: 要介護認定事務の効率化や適正化を進めることが必要。
  • サービス付き高齢者向け住宅等における居宅療養管理指導の適正化: サービス付き高齢者向け住宅などでの居宅療養管理指導の適正化も課題。

2. 保険給付範囲の見直し

  • 軽度者に対する生活援助サービス: 軽度者向けの生活援助サービスを地域支援事業へ移行し、効率化を図る。
  • 保険外サービスの活用: 利用者の多様なニーズに応えるため、保険外サービスの活用を推進することが必要。

3. 負担の公平化

  • 利用者負担(2割負担)の見直し: 介護サービスの利用者負担のあり方、特に2割負担の対象範囲について見直しの検討。
  • ケアマネジメントへの利用者負担導入: ケアマネジメントに対する利用者負担の導入についても議論が必要。
  • 多床室の室料負担の見直し: 介護保険施設等の多床室における室料負担の見直しも検討対象。

障害福祉サービス分野

障害福祉サービス分野では、主に事業者指定のあり方や指導・監督の強化が求められています。

  • 事業者指定のあり方の見直し: 障害福祉計画におけるサービス見込量の精緻化や、事業者指定時の審査体制を強化し、質の確保を図る必要がある。。
  • 事業者への実地指導等の強化: 不適切なサービス提供を防ぐため、事業者への実地指導や監査を強化することが重要。
  • 不正行為への対処: 不正請求などに対する加算金制度のあり方を見直し、利用者紹介に対する利益供与などの不正行為に対して厳正に対処する必要がある。

これらの改革は、人口減少・少子高齢化が進む日本において、社会保障制度の持続可能性を確保し、限られた財源を効率的に活用するための重要な取り組みと位置づけられています。

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