
介護・福祉の現場で働く皆さまにとって、避けては通れない「賃上げ」の話題。令和7年度(2025年度)の補正予算、そして令和8年(2026年)6月からの処遇改善加算の期中改正という、大きな動きが出てきました。
「やっと上がる!」という期待の一方で、ニュースで流れる他業界の「5%〜7%」という数字を見ると、「あれ?介護業界は2%前後……?」と、複雑な心境になる方も多いのではないでしょうか。
今回のブログでは、この改正の具体的な中身と、他業界との「賃金格差」という厳しい現実について、わかりやすく整理していきます。
1. 令和7年度補正予算:まずは「緊急の賃上げ」から
今回の動きは、二段構えになっています。まず動くのが、令和7年度の補正予算による「補助金」です。
これは令和7年(2025年)12月から令和8年5月までの半年間、報酬改定を待たずに先行して賃上げを行うための措置です。
補正予算による賃上げの仕組み(月額目安)
今回の補助金は、以下のような「3階建て」の構造になっています。
| 区分 | 内容 | 金額(目安) |
| 1階部分 | 全介護・福祉従事者への一律支援 | 1.0万円 |
| 2階部分 | 生産性向上・協働化に取り組む事業所への上乗せ | 0.5万円 |
| 3階部分 | 職場環境改善への追加支援(事業者の裁量) | 0.4万円 |
- 介護職員だけでなく、ケアマネジャーや看護職員、障害福祉の計画相談員なども対象に含まれたことが大きなポイントです。
- フルに活用すれば最大1.9万円の引き上げが可能ですが、2階・3階部分は事業所の取り組み状況に左右されます。
2. 令和8年6月:処遇改善加算の「期中改正」で制度化
補正予算による補助金(5月まで)をバトンタッチする形で、令和8年(2026年)6月からは「処遇改善加算」そのものが改正されます。
これまで「補助金」として別枠だった賃上げ分を、正式な「介護報酬の加算」として組み込む作業です。これにより、一時的ではない継続的な賃上げを狙っています。
6月改正の主なポイント
- 対象範囲の拡大: 訪問看護、訪問リハビリ、居宅介護支援(ケアマネ)など、これまで処遇改善加算の対象外だったサービスにも新しく加算が新設されます。
- 加算区分の再編: 生産性向上(ICT活用など)に取り組んでいるかどうかで、加算率に差がつく仕組みが導入されます。
3. 「2%」と「5〜7%」の壁。広がる他業界との格差
ここで避けて通れないのが、冒頭でも触れた他業界との格差です。
近年の春闘(労働組合と企業の交渉)では、製造業や大手サービス業を中心に5%〜7%という歴史的な賃上げが続いています。物価高に負けないスピードで給与が上がっている他業界に対し、介護・福祉業界の処遇改善加算による引き上げ幅は、全体平均で見ると2%前後(月額1万円程度)にとどまるという予測が出ています。
なぜ格差が埋まらないのか?
- 原資が「公定価格」である: 一般企業は商品の値上げで利益を出し賃上げ原資を作れますが、介護・福祉は国が決める「報酬」が原資。国の予算次第という限界があります。
- 複雑な加算要件: 満額(1.9万円)もらうにはICT導入などの高いハードルがあり、小規模な事業所では「1.0万円(約3%弱)」のベースアップが精一杯という現実があります。
- 物価高の影響: 事業所の光熱費や食材料費も高騰しており、加算が入っても経営を維持するだけで手一杯になり、職員への還元が「最低限」に止まってしまうケースも少なくありません。
4. これからの課題と現場への影響
この「賃金格差」は、単にお金の問題だけでなく、深刻な人材流出を招くリスクを孕んでいます。
「仕事のやりがいはあるけれど、同じ労働時間で他業界の方が5万円高いなら……」
そう考えて離職する若手職員が増えることは、日本の社会基盤そのものを揺るがす大問題です。今回の改正でケアマネや看護職が対象に含まれたことは一歩前進ですが、「他業界並みの昇給ペース」にはまだ届いていないのが現状です。
最後に:私たちの声を届けるために
令和7年度補正予算と令和8年6月の改正は、確かに「プラス」の動きです。しかし、これで十分とは言えません。
現場の専門性が正当に評価され、他業界に引けを取らない待遇が実現されるよう、今後も制度の動向を注視し、声を上げ続けていく必要があります。



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